クラフト・エヴィング商會の3代目店主・吉田浩美が古い引き出しの中から見つけたのは、「雲、賣ります」という広告の切り抜き。それは浩美の祖父であり、商會の先代でもある吉田傅次郎が出したクラフト・エヴィング商會の広告でした。その後、傅次郎氏が愛用していた古い皮トランクの底から古ぼけた手帖がでてきた。そこには、不思議な国アゾットに関する、驚くべき旅行記が記されていた。読み進むうちに、奇妙な物の数々に出会うことになる。得体の知れない機械、判読不能の書物やポスター、奇妙な譜面や小箱、そして酒の空壜らしきもの。壮大なスケールの冒険ファンタジー。
「永遠とは何か?」求めずにはいられない謎に答えを出すべく、クラフト・エヴィング商會が優しくも哀しい旅路へと導いてくれました。
このアイデアを伝える為の「本」という媒体でさえ、「永遠」のサイクルの中にはめこまれ、やがて、「雲」「地球」「宇宙」と視点は変わっていくが、いつの間にかまた自分自身の「背中」が見えてくる。
この本の「言いたいこと」に触れた時、私は去年天治を全うした我が家の愛猫のことを思い出した。私の世界と、この本の世界のイメージが響き合って、また私だけの世界が誕生する。いや、ただ忘却してしまったことを再び思い出しただけなのかも知れない。
美しくも不可思議な世界感を紡ぎだす「言葉」と「もの」たちは、クラフト・エヴィング商會、吉田篤弘さんの書籍の中に点在している「もの」や「世界」とどこかしら繋がっていそうでワクワクする。
クラフト・エヴィング商會の本を読んで安心するところは、「実はこういう「本」や「音楽」、「もの」を元ネタにしてますよ〜」と、結構明け透けにしてくれているところだと思う。その「小道具」たちのおかげで、読者と物語と現実が薄っすらとした縁で結ばれてる気がするから「あぁ、遠いけれど近い話」と思える。
■目次■
雲を売ろうとした男のはなし
[第1の手帳]ふたつの白い手袋、雲の母の書物、沙翁世界の逍遙、見えない師匠、もの忘れのひどい書記官、ブヴァールとペキュシエ帽子研究所、すべて・ありのままに・羽根あるもの
パスポート・ナンバーの謎を解く
[第2の手帳]サラマンドルのしっぽ、いま、ここにだけ降る雨、光を観るための旅、すばらしい耳、哲学サーカス団、不吉なる理髪師、青い涙を集めるひと
ゴンベン先生と一緒に読み解く[アゾット行商旅日記]第1の手帳と第2の手帳
[第3の手帳]小さな赤い悪魔、雨の降る中庭、星をめぐらせる劇場、静かなる晩餐、太陽王はかく語りき、かなでるものたち、クラウド・コレクター
バッカスに導かれて、バッカスのタロット全21枚解説
びん博士・庄司太一さんとクラウド・コレクションをつくる、あとがき